【エレキギター】は和製英語です。
英語では【electric guitar】と言います。
そして、エレキギターだけでなく、ギターのパーツやテクニックもカタカナばかりです。
英語の学習をしていると、
「ギターのカタカナ用語はそのままネイティブスピーカーに通じるのか」
が気になってきました。
長年趣味でギターを弾いてきた私、
これからの人生で、何かの弾みにギタリストとして全米デビューしてしまうことが無いとも言い切れませんので、
それに備え(?)、少し検証してみたいと思います。
エレキギターのパーツ名称に和製英語はあるか?
出典:TOTAL GUITAR
上の図は、DVDやオンラインのギター教材を販売しているTOTAL GUITARから引用させていただきました。
ぱっと見た感じ、
- ボディ=body
- ネック=neck
と、【カタカナ用語】が【本来の英語】と激しくかけ離れているものはあまり無さそうですね。
しかし、やはり表現が少し違っているパーツもありますので、いくつか取り上げてみます。
ピックアップ
ピックアップは、ピックで弾いた弦の振動を拾って電気信号に変える、エレキギターがエレキギターであるための重要なパーツです。
この【ピックアップ】というカタカナ用語は、英語の【pickup】から来ていますので、そのままネイティブに通じます。
ただし、発音は「ピックアップ」ではなく「ピカップ」です。
このピックアップ、多くのエレキギターには2~3個付いています。
これは、取り付ける場所によって音が変ってくるので、1本のギターでキャラクターの違う音をいくつも得るためです。
カタカナ英語では、ネック側を前(フロント)、ブリッジ側を後ろ(リア)と捉えて、
- ネック側:フロント・ピックアップ
- ブリッジ側:リア・ピックアップ
と呼びますが、上の図解によれば、英語圏では
- ネック側:Neck Pickup
- ブリッジ側:Bridge Pickup
と言うようです。
トレモロアーム
トレモロアームは、エレキギターのブリッジに付いていて、音程を激しく変えることができるパーツです。
ロックの世界では、
ディープパープルのギタリスト、リッチー・ブラックモア
アームプレイの名手、ナイト・レンジャーのブラット・ギルス
といった、激しい音程差を出したダイナミックなトレモロアーム奏法が有名ですね。
このトレモロアーム、上の図解では【Whammy Bar】と書かれています。
英語で【whammy】は、まじない・呪文を意味します。
確かに、特にハードロック/ヘヴィメタル系の曲で聴かれるトリッキーで豪快なトレモロアーム奏法は、まるでギタリストがギターに呪文を掛けているようですので、ぴったりの表現ですね。
一方で、カタカナ英語の基になっている【Tremolo Arm】も英語圏では使われていました。
【Tremolo】はイタリア語が語源で、
- 同じ高さの音を小刻みに続ける奏法(エフェクターの「トレモロ」の音)
- 高さが違う2つの音を素早く交互に出すビブラート的な奏法
のことを意味します。
トレモロアームは開発当時、後者のビブラート的な使い方を想定していたため【Tremolo Arm】という名前になりました。
しかし、その後登場したロックギタリスト達が、その想定を超える激しい奏法を編み出し、それがまるで魔術師のようだったことから、【Whammy Bar】が定着したと推測されます。
下の動画では、ハードロック/ヘヴィメタルで良く聴かれるトレモロアームを使ったトリッキーな奏法を紹介しています。
動画タイトルにも
「Using the Tremolo Arm or Whammy Bar in Metal Guitar」
とあるように、トレモロアームは、
- Tremolo Arm
- Whammy Bar
のどちらでもネイティブに通じるようです。
ヘッド
ヘッドは、エレキギターの弦を巻くパーツ(ペグ)が付いている部分です。
このヘッド、冒頭の図解では【headstock】となっていますが、Google検索で調べてみたところ、
- guitar head
- head
という呼び方もたくさん見つかりましたので、私たちが呼んでいる【ヘッド】でもネイティブに通じるようです。
話は逸れますが、
通常はこの【ヘッド】にギターのブランドロゴが付いてます。
ちょっとギターに詳しい人は、ヘッドのロゴを見れば、
- 高級な有名ブランドのギターなのか
- 無名の安物ギターなのか
がすぐにわかります。
安物ギターしか買えなかった私、ロゴを見られるのがちょっと恥ずかしかった少年時代の遠い記憶を思い出しました。
ギターテクニックの名称
チョーキングはbending
【チョーキング】は、指で押さえている弦をグイっと持ち上げて音程を上げるテクニックです。
ブルース/ロックギターの世界では、ギターで感情を表現するために必要不可欠な、定番中の定番のテクニックです。
この【チョーキング】は完全な和製英語で、ネイティブには全く通じません。
英語では【bending】です。
【bending】の動詞の原型【bend】は曲げるという意味になります。
上の動画のタイトル「How To Bend Strings~」から分かりますが、ネイティブにとってこのテクニックは「弦を曲げる感覚」であることがわかります。
一方、我たち日本人が呼んでいる【チョーキング】は、
choke=首を絞める
から来ています。
いつ誰がこう呼び出したのか、残念ながら情報が見つけられませんでした。
しかし、ネックを握り込んだ左手首をグイっと捻るこのテクニックは、確かにギターの首(ネック)を絞めているような動作になりますので、
bending=弦を曲げる
よりも、
choking=首を絞める
の方が、むしろロックな感じがする優れた表現じゃないでしょうか。
もしギタリストとして全米デビューしたら、この優れた和製英語【チョーキング】を世界に広めてやります。
ハンマリング、プリング
ハンマリング&プリングは、ピックで弦を弾く代わりに、弦を抑える左手の指を使って音を出すテクニックです。
特に、速いフレーズを滑らかに弾くのに使われるテクニックとして、ペアで語られることが多いです。
ハンマリングは、左手の指を指板(finger board)に叩きつけるようにして音を出します。
一方のプリングは、既に弦を押さえている左手の指を、指板から離すと同時に指先を弦に引っ掛けるようにして弦を振動させ音を出します。
我々日本人は単に【ハンマリング】【プリング】と呼ぶことが多いですが、英語ではそれぞれ
- hammering-on
- pulling-off
と呼びます。
日本で売られているギター教本の中にも、【ハンマリング・オン】【プリング・オフ】と説明されているものもありますね。
hammerはハンマーなどで叩くという意味、pullは引くという意味になります。
なんでonやoffが付くのかですが、おそらくこれはネイティブがこれらの技術に感じている感覚からきているんだと思います。
具体的には、ハンマリングは、指で指板を叩いたら、その指をそのまま指板に付けるからon、もう一方のプリングは、あらかじめ指板につけた指が指板から離れるからoff、ということになります。
この辺のon, off, in, outなどの前置詞の感覚は、日本語話者の我々にはなかなか理解するのが難しいですが、私が英語学習の過程で手にしたハートで感じる英文法を読むと、ネイティブが感じている前置詞のイメージを理解することができ、hammering、pullingにそれぞれon/offがくっついてくる感覚がわかるかと思いますので、おすすめです。
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以上、ギターパーツ、ギターテクニックの名称のうち基本的なものについて、いくつか和製英語か否かを検証してみましたが、完全なる和製英語は意外と少ないなと感じました。
ただし、ギターに関連する用語は本当にたくさん存在しますので、実はもっともっと和製英語があるかもしれません。
>>ギターは英語でguitar|つづり(スペル)の間違いに注意!
意外と間違えがちなギターのつづり(スペル)